トラックドライバー採用の具体策|採れない・定着しない運送会社へ
「求人を出してもトラックドライバーの応募が来ない」「やっと採れたのに3か月もたずに辞めてしまう」。中小の運送会社の社長や配車責任者の方から、こうしたご相談を多くいただきます。
ドライバー不足は業界全体の問題ですが、同じ地域・同じ条件でも採れている会社はあります。差が出ているのは、給与の額そのものよりも「仕事の中身が伝わる求人票」「応募後の対応の速さ」「入社後3か月の受け入れ方」といった、自社で手を打てる部分です。この記事では、トラックドライバー採用を仕組みとして立て直すための具体策を順に整理します。
この記事でわかること
- トラックドライバーが採れない構造と、2024年問題で変わった前提
- 応募が集まる求人票の書き方(車格・運行形態・拘束時間・休日・給与の内訳)
- 未経験・若手の採り方、応募対応、媒体の使い分け、最初の3か月の定着策
トラックドライバーが採れない構造
2024年問題で「長く走って稼ぐ」前提が変わった
まず押さえておきたいのが、いわゆる「物流の2024年問題」です。厚生労働省の「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」によると、2024年(令和6年)4月から、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用され、原則は月45時間・年360時間、臨時的な特別の事情がある場合でも年960時間が上限となりました。
同じ時期に、トラック運転者の「改善基準告示」(拘束時間や休息期間などのルールを定めた厚生労働大臣の告示)も改正後の基準が適用されています。同ポータルサイトに掲載されている主な内容は次のとおりです。
- 1年の拘束時間:原則3,300時間以内(労使協定により3,400時間まで)
- 1か月の拘束時間:原則284時間以内(労使協定により年6か月まで310時間。284時間超は連続3か月まで)
- 1日の拘束時間:13時間以内、延長する場合も最大15時間(14時間を超える回数は週2回までが目安)
- 休息期間:継続11時間を与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない
- 連続運転時間:4時間以内
全日本トラック協会は、こうした規制で労働時間が短くなることにより輸送能力が不足し「モノが運べなくなる」可能性があることを「物流の2024年問題」と説明しています。同協会のサイトでは、国の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の試算として、何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年に14.2%、2030年に34.1%不足する可能性があると紹介されています。
採用の視点で言い換えると、「一人に長く走ってもらう」ことで回してきた会社ほど、人数を増やさなければ仕事を受けきれなくなるということです。一方で求職者から見ると、「長時間走らないと稼げない会社」なのか「決められた時間の中で稼げる会社」なのかが、会社選びの大きな判断材料になっています。
「中身の見えない求人」になっている
採れない会社の求人票でよく見るのが、「4t・10tドライバー募集」「月給30万円以上可」「未経験歓迎」だけが書かれた求人です。ドライバー経験者ほど、車格、走るエリア、手積みか否か、何時に出て何時に帰れるのか、給与のうち固定部分はいくらか、といった点を見て判断します。書かれていなければ「書けない事情があるのだろう」と受け取られ、応募の候補から外れてしまいます。
応募が来ても、取りこぼしている
もう一つの構造的な問題は、応募後の対応です。配車や運行管理と採用を同じ人が兼ねていると、応募の連絡が夜や翌日以降になりがちです。ドライバーの求職者は複数社に同時に応募していることが多く、先に連絡をくれた会社で話が進みます。応募数だけを見て「媒体が悪い」と判断する前に、応募から面接までの流れを確認することが大切です。
求人票で伝えるべきこと
求人票は、求職者にとって「入社後の1日を想像するための資料」です。次の項目を、できるだけ具体的な言葉と数字で書いてください。
車格と運行形態
- 車格:2t・4t・大型(10t)・トレーラーなど。ウイング、平ボディ、冷凍・冷蔵などの車種も
- 運行形態:地場(日帰り)・中距離・長距離、ルート配送か都度の配車か、車中泊の有無
- 荷物と荷役:何を運ぶか、手積み・手降ろしか、フォークリフト作業か、パレット輸送か
- 車両:専属車か、年式やAT車の有無など、ドライバーが気にする設備
拘束時間と休日
「勤務時間:シフトによる」だけでは判断できません。「例:6時出庫、17時帰庫」のように、代表的な1日の流れを書きましょう。休日も「週休2日制」ではなく、「日曜+他1日(シフト制)」「年間休日◯日」「連休の取りやすさ」など、実態に近い書き方が伝わります。改善基準告示を守った運行計画になっていることは、今や求職者にとって安心材料です。自社の運行が基準内に収まっていることを、言葉にして伝えてください。
給与の内訳と手当
ドライバーの給与は、基本給・歩合・各種手当・残業代などの組み合わせで決まることが多く、「月給30万円以上」だけでは中身がわかりません。求職者が知りたいのは、「固定で保証される部分はいくらか」「何によって増減するのか」です。
- 基本給と、歩合・運行手当など変動部分の内訳
- 無事故手当・資格手当・家族手当など、手当の名称と支給条件
- 入社1年目・3年目などのモデル給与(実在する社員の実績をもとに)
- 賞与・昇給の有無と、その判断の基準
2024年問題以降、残業時間の上限があるなかで「残業で稼ぐ」説明は通用しにくくなっています。固定部分の比率や、時間内で稼げる仕組みを示せるかどうかが、応募の差になります。
未経験・若手を採る
経験者だけを狙うと、同じ地域の運送会社と同じ人を取り合うことになります。採用の母集団を広げるには、未経験者や若手を自社で育てる入口をつくることが有効です。
免許の区分を理解して「入口の車格」を決める
警察庁・総務省消防庁のリーフレットによると、現在の普通免許で運転できるのは車両総重量3.5トン未満(最大積載量2トン未満)の自動車です。一方、準中型免許は18歳から普通免許なしでも取得でき、車両総重量7.5トン未満(最大積載量4.5トン未満)の自動車を運転できます。
つまり、若い世代の普通免許だけでは、いわゆる2tトラックでも運転できない場合があります。「未経験歓迎」と書くなら、どの免許で、どの車格から始められるのかを求人票に明記してください。まずは小さい車格で経験を積み、社内で段階的に大型へ進む道筋を示すと、応募する側も将来を描きやすくなります。
免許取得支援は「条件」まで決めて伝える
準中型・中型・大型免許の取得費用を会社が負担する制度は、未経験者や若手にとって大きな魅力です。ただし「免許取得支援あり」の一文だけでは伝わりません。対象となる免許、会社が負担する範囲、取得のタイミング(入社前か入社後か)、教習中の勤務の扱いまで決めて書きましょう。
なお、「一定期間内に辞めたら費用を返してもらう」といった取り決めには法律上の論点があります。制度をつくる際は、社会保険労務士など専門家に確認してから運用してください。公的な助成制度が使えるかどうかも、最寄りの労働局やハローワークで確認できます。
同乗研修の期間と内容を見せる
未経験者が一番不安に感じるのは「いきなり一人で走らされるのではないか」という点です。先輩の横に乗る期間、ルートを覚える手順、一人で走り始める判断基準を、求人票や面接で具体的に伝えてください。
応募への連絡の速さと面接設定
採用は営業と同じで、問い合わせ(応募)への初動がその後を大きく左右します。次のような仕組みで、担当者の忙しさに左右されない対応をつくりましょう。
- 応募の通知を、配車担当以外も含めた複数人のスマートフォンに届くようにする
- 最初の連絡は当日中を目標にし、電話がつながらなければSMSやメールで面接候補日を送る
- 面接枠をあらかじめ週に数コマ確保し、その場で日程を決められるようにする
- 在職中のドライバー向けに、早朝・夕方・土曜の面接や、車庫・車両の見学を用意する
- 面接前日に場所・持ち物・担当者名をリマインドし、当日の辞退や無断欠席を減らす
面接は「選ぶ場」であると同時に「選ばれる場」です。実際に乗る車両を見てもらい、現場のドライバーと話す時間をつくると、入社後のギャップも小さくなります。
媒体・ハローワーク・スカウトの使い分け
「どの媒体が一番いいか」という答えはなく、役割を分けて組み合わせるのが基本です。
- ハローワーク:無料で掲載でき、地元志向の求職者に届きます。求人票の項目が細かく決まっているため、前述の車格・運行形態・給与内訳を丁寧に埋めるだけで他社との差がつきます
- 求人検索サイト・求人広告:応募の量を増やす役割です。費用をかける前に、求人原稿と応募対応の仕組みを整えておかないと、応募が来ても採用につながりません
- ドライバー特化の求人サービスやスカウト:経験者や大型免許保有者を狙うときに有効です。待つだけでなく、会社側から声をかける「攻め」の手段として使います
- 自社の採用ページ・リファラル(社員紹介):どの経路から来た人も最後は会社名で検索します。現場の写真や社員の声を載せた受け皿を用意しておくと、応募の後押しになります
大切なのは、経路ごとに「応募数」「面接数」「採用数」「かかった費用」を記録し、数か月単位で配分を見直すことです。数字で見ると、費用をかけていた経路から実は1名も採れていなかった、ということがよくあります。
定着:短期離職を防ぐ最初の3か月
ドライバー採用では、採った人が早期に辞めてしまうと、また一から募集することになります。短期離職の多くは、入社前に聞いていた話との違いや、職場での孤立から生まれます。最初の3か月に次のことを決めておきましょう。
- 入社前:配属予定の車格・ルート・勤務時間・給与の内訳を書面で確認し、求人票と違う点がないようにする
- 1か月目:同乗研修の担当者を一人決め、毎日の終業時に困りごとを聞く
- 2か月目:一人で走り始める時期と、最初に任せるルートを本人と一緒に決める
- 3か月目:社長や配車責任者が面談し、給与明細の見方や今後のステップ(車格・免許取得)を話す
配車の公平さも定着に直結します。「新人ばかりきつい仕事が回ってくる」と感じると、人は早く離れます。配車のルールを説明できる状態にしておくことが、ドライバーの信頼につながります。
支援事例
運送会社(従業員20名規模):12か月で応募3名→54名
トラックドライバーの採用に取り組んだ従業員20名規模の運送会社では、12か月で応募数が3名から54名に、採用数が1名から9名に増えました。短期離職率も80%から50%に下がっています。応募を増やすことと、入社した人に定着してもらうことは別々の課題に見えますが、この事例のように両方の数字を並べて追いかけることで、採用全体の成果として確認できます。
物流(現場・内勤):採用単価100万円超→45万円
現場職と内勤職を募集していた物流会社では、選考途中の辞退が増え、1名あたりの採用単価が100万円を超えていました。支援開始から6か月で、採用単価は45万円になりました。辞退が増えている状態で広告費だけを積み増しても、採用単価は下がりにくいものです。応募を「集める」ことと同じくらい「取りこぼさない」ことが重要だと示す例です。
Talencoでは、こうした運送・物流会社の採用を、求人票の見直しから応募対応、定着の仕組みづくりまで伴走しています。自社で採れる仕組みを社内に残すことを前提に進めますので、詳しくは物流・運送業の採用代行のページをご覧ください。
まとめ
トラックドライバーの採用は、2024年問題によって「一人に長く走ってもらう」前提が変わり、人数を確保しなければ仕事を受けきれない時代になりました。そのなかで採れている会社は、特別な高給を出しているとは限りません。
- 車格・運行形態・拘束時間・休日・給与の内訳を、求人票で具体的に伝える
- 免許の区分を踏まえて、未経験・若手が入れる入口と成長の道筋をつくる
- 応募には当日中に連絡し、面接枠と見学の機会を用意しておく
- 媒体は役割で使い分け、経路ごとの数字で見直す
- 最初の3か月の受け入れを決めて、短期離職を減らす
どこから手をつけるべきか迷う場合は、今の求人票と、直近の応募から入社までの記録を並べてみるところから始めてください。自社だけで整理が難しいときは、物流・運送業の採用代行や無料相談もご活用ください。
よくある質問
Q. 給与を上げないとドライバーは採れませんか?
A. 給与水準は大切ですが、それだけで決まるわけではありません。まずは給与の内訳や拘束時間、休日などが求人票で正しく伝わっているかを確認してください。同じ条件でも、伝え方と応募対応を変えるだけで応募や採用が変わることがあります。
Q. 大型ドライバーの経験者だけを狙うべきですか?
A. 経験者の採用は即戦力になる一方、他社との取り合いになりやすい層です。経験者向けのスカウトと並行して、準中型など小さい車格から始められる未経験・若手の入口を用意し、免許取得支援で大型へ進む道を示すと、採用の幅が広がります。
Q. ハローワークだけでも採用できますか?
A. 地域や職種によっては可能です。ハローワークは無料で掲載でき、求人票の項目を丁寧に埋めるだけでも見え方が変わります。応募が足りない場合は、求人検索サイトやスカウトなど他の経路と組み合わせ、経路ごとの成果を見ながら判断するのがおすすめです。